高杉晋作をよく知れる
おすすめ本

小説からコミック、学術本まで、数多くの書籍が出版されています。
じっくり高杉晋作に親しむのもよし、SNS 投稿などでちょっと調べものをしたい時など、お手元にあるとお薦めの書籍を御紹介します。

◆ 世に棲む日々 / 司馬遼太郎

世に棲む日々
前編は吉田松陰、後編は高杉晋作の生涯が描かれている。
1969年2月から1970年12月まで「週刊朝日」に連載された小説で、NHK大河ドラマ「花神」の 原作 にもなった。

年代が古いので史実に多少の誤りもあるが、長州幕末物語のバイブルとして、いまでも最高の 人気を誇る。
テンポ良い文章なので、4巻という長篇であるが楽しみながら読める。

◆ 高杉晋作 / 池宮彰一郎

高杉晋作
 これまで龍馬ものの副主人公にすぎなかった高杉晋作を見事に維新の主人公として取り上げ た。池宮は〈忠臣蔵〉の世界を文化にまで高めた殺人劇を描いてデビューしたが、この作品で は疾風怒涛の晋作の生涯を描いて民族の血の問題にまで迫ったといえるのではないだろうか。 高杉は奇兵隊を作って長州藩内で決起するが、これがなければ明治維新はならなかったのでは ないか、と思わせる。

幕末には西郷、龍馬もいるが、この作品に比べると小粒に見えてくるのが不思議。作り物と思 わせない作者の大変な力量を感じられる。

さて、この作品の中で一番印象に残った場面を紹介したい。それは高杉が桂小五郎のことを調 停屋、坂本龍馬のことを斡旋屋、中岡慎太郎のことを旅廻りの将棋指しと言い放ち、最後に自 分のことを戦争屋というところだ。そして百人の坂本龍馬がいても革命発起にはならないと作 者が断言しているところなどは、物語がクライマックスだけに晋作の大きさを感じさせるシー ンであった。

高杉晋作ファンならば必読の書であろう。

◆ 晋作 蒼き烈日 / 秋山香乃

晋作 蒼き烈日
秋山氏は女性で数多くの志士の物語を書いているが、主人公をいかにかっこよく描くかに腐心 しているそうである。
この小説の晋作もかっこいいのと同時に、どこまでも優しい人間であったという彼の深い魅力 を描きだしている。

女性たちとの関わりについても、女性作家ならではの視点で納得させられる。
常に英雄視される晋作が、女性相手には不器用な一面や寂しがりやな一面を見せる。そのギャ ップがたまらなく、晋作ファンのみならず楽しめる一冊である。

◆ 春風伝 / 葉室麟

春風伝
平成23年(2011)から24年に渡り、「小説新潮」に連載された。
少年時代からの晋作を描いているが、時代時代の要所をうまくまとめており、歴史小説という より人間晋作を描いた小説という読後感が得られる。

小倉戦争の激戦時に体力が限界にきて、着流しと軍扇だけという装いで船に乗り込む晋作のこ とを、「重い軍装に堪えられないからだ」という描写。
「ずっと晋作を描きたかった。この小説は、今の私の集大成である」という筆写の思いが伝わ る、隠れた名作である。